時節柄、「百人一首」の解説本が目に留まった。高校の冬休みに全首を暗記させられた経験を持つ人もいるだろう。自分も、教本に掲載されていたかるたの札絵を見ながら、詠み人のイメージを描き、一首ずつ覚えた記憶がある▼ところが、今日手にした解説本、何と漫画付き。恋の歌などはハートマークいっぱい、「ガァーン」「シクシク」といった擬態語が随所にあるのだ。面白く、三十一文字の説明は分かりやすいかもしれない。でもこれでよいのだろうか▼短歌の詠まれた情景は、その一首に出合った各自が、その時代を学んだ上で想像してこそ見えてくるものではないのか。それを、漫画というビジュアル手法で与えてしまっては味気なく、それよりまず、本質は理解できないだろう▼同様の例はほかにもある。やたら多い「漫画で見る○○」。最初の一歩や、子供の興味を呼び起こすのにはいい。でも、それはあくまで糸口で、その奥を見なければならないと思う。
片隅抄