大男が被災者にビンタ。おだやかな話ではないが、相手がこの人なら仕方ない。5日、避難所の江名中などを激励に訪れたアントニオ猪木さん。同日夕のテレビで来市を知った▼若い人にとっては、無邪気にパフォーマンスを演じるタレント程度に思われているかもしれない。だが現役時代の活躍を知るオールドファンは、その名勝負の数々を深く脳裏に刻んでいる▼巡業の多い仕事柄、いわき市に何度も訪れている。古い記録では昭和41年10月18日、新団体「東京プロレス」のエースとして旧内郷ヘルスセンター前広場で試合を行い、合間に福島整肢療護園で入所者を慰問した様子が本紙に残る▼少年期に異国ブラジルで辛酸をなめ、栄光と挫折を繰り返したリングの王者。生来のスターらしく、いつも前向きで明るい。一見、荒っぽい「闘魂注入ビンタ」も猪木流の愛情表現なのだろう。震災、原発事故に気持ちも沈みがちになるが元気を出して一歩ずつ進みたい。
片隅抄