東日本大震災後、心配していたことが現実になった。相馬市の酪農家が将来を悲観し、自らの命を絶ってしまったのだ▼大震災後の4月から3カ月連続で前年の同じ月より自殺者が増えたことが警察庁の調べで分かった。専門家は震災と自殺との因果関係は分からないというが、震災によって肉親ばかりか生活基盤そのものまでも失った被災者の絶望感は計り知れないものがある。いわき市も沿岸部を中心に甚大な被害に見舞われた。今は頑張れても、そこに原発や風評問題が加わり精神的に追い詰められて、いつ死を選ばないとも限らない▼書家で詩人の相田みつをさんの作品にこん詩がある。「アノネ/にんげんはね/自分の意志で/この世に生まれて/きたわけじゃねんだな/だからね/自分の意志で/勝手に死んでは/いけねんだよ」題は『いのち』▼せっかく大災害から逃れた命、生かされたのにはそれなりの役割があると信じて、前を向いて生きていってほしい。