予算や法律で動く行政側と当事者(住民)との意見の隔たり、感情のもつれ――これを〝温度差〟と呼ぶが、東日本大震災後の復興でもそれを感じることができる▼大津波で壊滅的な被害を受けた沿岸部ではがれきの撤去などが終わり、これから新しいまちづくりが始まる。今は行政側と住民側がよりよい将来構想について意見を出し合っているところだ▼いろいろな青写真が描かれるだろうが、沿岸部には今後、新たな高い堤防ができて、人家がなくなった跡は緑地帯(防風林)や防災道路が整備され、住民は海から離れた高台に新しい町をつくることになるという話も聞いた▼今まで住んでいた土地を離れたくないが、あの津波の恐怖を2度と味わいたくないという住民の無念の気持ちを、行政側がどこまで理解して計画に反映するのか。かつてない長期的で難しい取り組みだけに、両者の温度差が感情のもつれとなり、それが復興の遅れにつながらないことを祈りたい。