古い新聞をめくっていたら「民家の裏山からタヌキの親子が下りてきて、心優しい家族がエサをあげて面倒をみている」というマチだねが出ていた▼今はそんな悠長な関係ではなくなっている。住宅街にクマやイノシシ、サルといった動物が現れてはエサをあさり、時には人をも襲う。珍しいカモシカでさえ人里で目撃情報があるほどだ▼身近なところでは、車にはねられて路上に横たわるタヌキなど小動物の死体だが、その無残な姿を見かける頻度が増したような気がするのは抄子だけだろうか。さまざまな動物が住みにくくなった山を追われて人里に下りてくるという図式だが、では山は今どうなっているのかといえば、具体的な姿がなかなか見えてこない▼造成が進んで自然の山そのものがなくなったのも一因だろうが、人間と動物のバランスのとれた住み分けは今後も崩れていくのだろうか。人間が行き場のなくなった動物に街中で襲われる――尋常な事態ではない。