子供のころ、家の近くに程よい広さの池があって、よく魚やザリガニ釣りをして遊んだ。後になって埋め立てられたが、何も利用されず放置されていた▼そこに今、仮設住宅が建設されている。福島第一原発が立地する双葉郡大熊町の住民が暮らすことになるのだという。山に囲まれた小さな農村の空き地にも仮設住宅ができるほど、避難住民が多いということだ▼双葉郡富岡町に住んでいた姉や同級生もいわき市に避難してきた。明るく振る舞ってはいるが、時おり真顔で将来の不安を口にする。「いつ、もとの生活に戻れるのか?」の「いつ?」がまるで見えないのだから▼これから年末・年始のあわただしい時期を迎える。受け入れ側のいわき市民と避難してきた人たちとの交流をどう図っていくのか。先が見えない現状では、行政単位ではなく、地域コミュニティーという枠内でも考えていかなければならないだろう。厳しい状況をプラスに転じるアイデアが必要だ。
片隅抄