イチロー選手がオリックスで活躍していた平成7年、阪神淡路大震災が発生した。その年、オリックスのユニホームの左袖には『がんばろう!KOBE』の合言葉が刺しゅうされていた▼東日本大震災では『がんばっぺ!いわき』の合言葉が至るところでみられる。〝がんばろう〟ではなく〝がんばっぺ〟。何気なく使っている方言だが、復旧復興への心意気を示す〝がんばっぺ〟には標準語の〝がんばろう〟にはない力強さを感じる▼鳥越俊太郎さんも「標準語はみんなが知っているし、わかりやすいが耳に残らない。味のある、なまりのある方言を大事にしようよ」と言っていた。方言とは、その地方に特化した言霊のパワーをもつ言葉なのではないか。なるほど、石川啄木も「ふるさとの訛なつかし――」と詠んでいる▼けっぱれ、がまたせ、ちばりよ、がんばらんば、きばりや、がんばらんまいけ……これらの言葉には、祖先から受け継がれた力強さがこもっている。
片隅抄