5月から6月にかけてのスポーツは、真夏に繰り広げられる全国大会への予選が多い▼市大会から県大会、そして東北大会から全国大会へ。ステージが進めば競技レベルが上がり、さまざまな強豪が立ちはだかる。目前のライバルだけではない、自分の心の中に巣食うプレッシャーとも戦わなければならないのだ▼夏・冬の五輪では、この種のプレッシャーにつぶれてしまった選手のエピソードが実に多い。現在行われている大相撲でも初優勝を前にした稀勢の里が苦しんでいる。3敗を維持できず4敗による優勝争いになるのではないか▼加藤沢男さんといえば、3度の五輪で8つの金メダルを獲得した伝説の体操選手だが、加藤さんは普段から〝失敗する練習〟をしてプレッシャーに備えていたという。成功することばかり追っているから土壇場で失敗を恐れてしまう。加藤さんは、どうすれば失敗するのかを練習で体にしみ込ませていたという。失敗は成功のもと、だ。
片隅抄