「氷雪融け雨水温む」の時期を迎えた。が、前日の朝は全国各地で氷点下の気温となり、またいわきの浜には強い風が吹き、まさに「春は名のみ」の日々である▼とはいえ、着実に昼は長くなり、余寒厳しきながら一歩ずつ春に近づいているのも確かである。昨今、二十四節気の間をさらに5~6日単位の3つの時候に分けた七十二候が、静かながら注目されている▼例えば、本日の雨水から3月5日の啓蟄までは、初候「土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)」、次候「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」、末候「草木萌動(そうもくめばえいずる」と移っていく。これらを毎日の暮らしの中で意識すると、季節の小さな変化が、体にしっくりと入ってくる感がある▼今は寒くてもあと半月の間には、土が湿り霞が立ち始め、草木が芽吹き虫が動き出す日が来る―今冬の寒さに耐え「もう少し、もう少し」と春待つ人々に、日本古来の美しい言葉が優しさを運んでいる。