先ごろ、絶滅する可能性が最も高い絶滅危惧Ⅰ類に属する貴重な植物クモランを発見した平の吉田一右さんが、今度は、さらに珍しいとされるスギランの生息地を県内で初めて確認した▼吉田さんは71歳だが、野外調査の際は愛用のスポーツ自転車を駆って片道50㌔先まで苦もなく出かける。自転車であれば、いつでも止まって観察できるから便利なのだという▼時には渓谷の急なガケも登る。あるとき木の枝だと思ってつかんだらヘビだったよ、と笑った。ここぞという場所では双眼鏡やズームレンズ付きのカメラで林の木の枝先まで入念にチェック。必ず往復して、帰りは1度見た木や岩の反対側にも注意を凝らす▼希少植物の話をする吉田さんはまるで少年のようだ。1日中野山を歩き回って何の収穫もない日がほとんどだが、それでも新しい発見を楽しみにペダルをこぐ。夢中になる趣味をもち、それに耐えうる健康な心身を維持する。こんな元気な老後でありたい。