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片隅抄

2013.05.20

村上春樹の新作小説の売れ行きがすごいと聞く。そんな今、あえて旧作の随筆集『走ることについて語るときに僕の語ること』を開いてみた▼氏は専業作家として歩み始めた昭和57年、小説を書くための体調維持にとランニングを開始した。以来30年、日常のジョギングや数々のレースへの出場を続けている▼で、この随筆集、小説とはまた違う妙味を有していた。マラソンの真髄を示す先達の、要約すれば「きついことは避けようがないが、もうだめだと思うかどうかは自分次第」という言葉の紹介、そして氏本人の「本当に価値のあるものごとは往々にして効率の悪い営為を通してしか得られない」という考えの披歴などに、頁を繰る指がとまった▼が、そもそもなぜこの1冊を手に取ったのか―それは、サンシャインマラソンの余韻に相違ない。いわきを走ってくれた全国各地のランナーの心情に少しでも近づけたら…そんな思いが、3カ月以上たった現在も消えないのだ。

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