大学生時代を過ごした「江古田」をテーマにした「江古田スケッチ」という歌がある。この歌を聴くと、当時の情景が走馬灯のように頭をよぎる。歌にはそんな魔法のような力があるものだ▼ある時それと似た思いをしたことがある。昔の手帳を見ていた時だ。そこには大学の同級生から、「三千円借りる」と記載されていた。三千円も無かった事があったのかという恥ずかしさと同時に懐かしさがこみあげてきて、思わずその手帳のみならず、過去の手帳を見ることになった▼今や手帳もPCや、スマホで管理される時代になった。それらがリンクし、機能的には数段進歩した。しかし手書きの手帳には利便さに負けない不思議な力がある。その力は時が経てば経つほど大きくなっていく▼技術の革新自体否定するつもりはない。ただ、利便性を追い求めるあまり、忘れ去られているものがあるように思う。過去の手帳を見てほっとするような「心」を大事にしないといけない。
片隅抄