早いもので1月も終わる。来月4日は立春だが、まだまだ寒さは厳しい。寒中の作業といえば新酒の仕込みがあり、いわき市内では遠野町に古くから伝わる「いわき遠野和紙」作りが始まる▼原料のコウゾを刈り取り、蒸し上げ、表皮剥ぎ、乾燥などを施しながら紙漉きにいたるまで、さまざまな工程を経ていく根気のいる作業だ。それだけに出来上がった和紙は、独特の手触りを持つ品になる▼記録によると、同地区の和紙作りの歴史は永禄年間(1558~69)にさかのぼり、明治20年代には約600戸が生産に従事していたという。その数も年々減少の一途をたどり、伝統工芸といえども後継者不足は否めないのが現状▼今月から同町で関係団体が協力した「遠野和紙紙料製造育成講座」が開講した。紙漉きの前段階にあたる原材料の加工スタッフを養成し、地場産品の保存継承を目的にする。まさに手作業の連続だが、伝統文化の担い手には違いない。
片隅抄