「故郷」を最初に意識したのは、大学時代だ。出身地が違う多くの友に出会い、それぞれの故郷の話を聞くようになった▼すると彼らの思考に、生まれ育った土地の自然や文化が大きくかかわっていることが分かり、人は故郷によってつくられると感じるようになった。そして今、あらためて「故郷」について考えている▼先週、県が行った地価調査の結果が発表された。それをみると市内の住宅地では、原発事故被災地からの移転需要による値上がり傾向が顕著だという。同じころ、双葉郡から避難している人々の「故郷に帰りたい。でも帰れない。これが現実」という言葉を耳にした▼これが、今のいわきの姿なのだ。震災直後に至るところで目にした「がんばっぺ!いわき」のスローガンは少なくなったが、本当の頑張り時は、これからなのだと思う。いわきは、帰れない故郷を持つ人々に、新たな故郷を提供する役目も担っていかなければならない土地なのだと思う。