梅雨の今、訪ねる先々でアジサイの花に出合う。そのたびに紫、ピンク、白といったさまざまな色合いや、多くの種類があることを知り、あらためて驚いている▼アジサイの花色の変化には土壌の酸度や、花期が長いことによる色素の変化が影響しているとされる。そんなアジサイは、花言葉も多様だ▼咲いている間に色が変化することから来る「移り気」はよく知られるが、その花期の長さにちなんだ「辛抱強さ」や、小さな花が寄り集まって咲くことから「家族の結びつき」といった意味もあるという。また、フランスにおいては、花期の6~7月が快適な季節であることから、「元気な女性」の意味も持つ▼江戸時代の長崎でオランダ商館付医を務め、後に国外追放されたシーボルトが、愛した日本人妻楠本滝(お滝さん)を思い、彼女の名前からアジサイを「オタクサ」と名付けたという話も有名だ。何はともあれ、この時期ならではアジサイを、存分に楽しみたい。
片隅抄