近年、アドラー心理学がブームだ。2年半前に出た『嫌われる勇気―自己啓発の源流「アドラー」の教え』は今なおベストセラーで、この2月には続編『幸せになる勇気』も発刊された。ほかにも関連本が多数出ている▼アドラー心理学の特徴の一つに「目的論」がある。「人の性格や人生は過去に縛られるものではなく、未来への目的によって左右される」という考え方だ。言い換えると「原因より目的にこだわるべき」となろう▼何事かに挫折した時、自分を納得させるために、その理由や原因を探したがることがままある。しかし、この「原因論」では未来は開けない。そもそも何の目的でそれをやろうとしたのか―目的を考えれば、そこへ向かう道がほかにもあることに気づくこともあろう▼アドラー心理学では、目的論を理解すれば心が折れにくくなり、再挑戦も可能になるとしている。大切なのは「原因」ではなく「目的」。日常の中で、あらためて心したい。
片隅抄