先に小欄でアドラー心理学について触れたが、再度その特徴の一つを―。「子どもを育てるときは、叱ってはいけない。褒めてもいけない」そうだ▼「偉いね」「すごいね」と褒めるのは、縦の関係から生じるもので、上から相手を操作しようとする意識の表れという。厳しく叱ることも同様でその結果、子は「褒められるように・叱られないように」行動するようになる。そこから自主性は生まれず、親への依存心ばかりが強くなるという▼なら、どうすればいいのか。アドラー心理学は「横の関係を築くべき」と説き、親は感謝や喜びをそのまま伝えることが大切とする。「ありがとう」「助かった」「うれしい」という言葉に、子は自分が役に立っていること=自分の価値を実感できるそうだ▼これは、全ての対人関係にいえるだろう。人は自分が、貢献していることを実感できることで勇気づけられ、くじけない心を持てるようになる。人は人により生かされている。
片隅抄