日本人は玄関で靴を脱いでスリッパに履き替えたと思ったら、廊下を数歩進んで座敷に入るときにはそれを脱ぐ。とても不思議だ――西洋人のこんな声を聞いたことがある。「室内でも土足」の文化を持つ人々ならではの感覚だろう▼そしてスリッパは、日本が発祥地。幕末維新期、来日した西洋人が、土足で畳に上がろうとしたことから、靴の上から履くものとして作られたのが始まりとされる▼さらに今、スリッパはどの家庭にもあるもので、その多くは、するっと履けてするっと脱げるのが特徴だ。が、それがけがのもとになることもある。何かに引っ掛かり転びそうになった経験は誰にもあるだろう▼病院などでも、入院患者の上履きを、つまずきやすいスリッパではなく運動靴にするよう呼び掛けている。こうしたことを考えると、高齢化が加速する中、生活に密着したものだからこそ安全性を高める工夫が必要で、それを施した新開発品が登場する日も近い気がする。