気が向いた時、実家に山積みのビデオテープを整理することがある。いわゆるDVDにダビングすることだが、ものの本によると生産シフトを海外に移す前の国内製テープは、耐久性などに優れているものが多いという▼先日、20年以上前に放送された「山口瞳の行きつけの店」を移し取った。互いに今は亡き、古今亭志ん朝師匠が案内役を務め、作家本人が全国のなじみの店を訪問する企画だった。再度確認すると師匠の語り口から江戸調アクセントに気付いた▼「やまぐちひとみ」が「やまぐちしとみ」とある。全編の端々にこの微妙な味わいを感じることができた。そしてもう1人、つい最近ハードディスクに収めたのが彼の兄弟子立川談志師匠にまつわる番組▼寄席のライブを伝えるものだったが、これが師匠らしい。「観客は演者あってのもの」「俺目当ての客は、誰も古典落語やれなんて言わない」。この毒、本市に訪れる立川流弟子たちからも聞いてみたい。