先日、行き付けのバーに行った時の事。そこでのいつもの酒は、ウイスキーのロック。ただその日は、「テキーラサンライズ」という、カクテルをたのんだ▼アメリカのロックバンド「イーグルス」の曲名にもなっている事を思い出し、久しぶりに飲んでみたくなったからだ。その歌の主人公はうぶな少年。意中の彼女が勤める店に通い、今日こそ告白しようとチャンスをうかがうが、なかなか言い出せない。そんな中無理をして「もう一杯」とテキーラサンライズをたのみ、時間だけが過ぎていく。そんな淡い恋心を歌った歌だ▼オレンジを朝焼け、グラスの底に沈んだグレナデンシロップの赤を太陽に見立てたこのカクテルは、その少年の気持ちのようにほろ苦く郷愁を誘う味だ。あのミック・ジャガーが愛した酒でもある▼カクテルには、その名称に由来がある。曲名や映画のタイトルになったものもある。そんな話をバーテンダー相手に語り合うのも酒の楽しみの一つだ。
片隅抄