毎年秋になると中学3年生の職場体験が行われ、そのうちの何人かがいわき民報社で体験をしていく▼いつのころからか〝一日記者〟の名刺を作って、体験取材のときに使ってもらっている。40年前、初めて名刺を手にしたとき、自分も社会人になったのだという実感と緊張感がしたものだが、今の中学生たちはどうだろう▼彼らに取材のイロハを教えながら、いつの間にかマンネリで忘れてしまっている新人記者のときの基本を反芻している。昔は1本36枚撮りのフィルムだった。今のデジカメのようにモニターで画像を確認することも、100枚も200枚も平気で撮ることはできなかった▼写真部の先輩に撮ったばかりの写真を見てもらったときのこと。「お前、この取材やる気がなかっただろう?」。ネガを見ながらそう言われた。見ただけで、新米記者がどんな気持ちで現場で取材してきたかを見抜かれたのだ。こんなセリフを、一日記者たちに吐いてみたいものだ。
片隅抄