かつて作家開高健さんが自ら世界各国を巡ったテレビシリーズがあった。アマゾン、アラスカ、ヨーロッパなどで釣り糸を垂れ獲物と格闘した▼フィッシングというより、奥地探索の趣があった。寒暖の厳しい自然環境の中でも得意のジョークを飛ばし、文学的うんちくを披露するなど、放送されるたびに見入ったものだ▼シリーズのひとつに「モンゴル大紀行」がある。幻の魚イトウを釣り上げることにテーマを置いた番組だった。急流の河川で釣果を望むが幾日たってもゼロの日が続き、滞在最終日にやっと念願がかなう▼さて、そのモンゴルの子どもたちが伝統芸能を披露する「チャリティーコンサート」が16日、いわきアリオスで開かれる。収益は彼らが居住する児童保護施設の運営資金などに充てる。東日本大震災時、爪に火をともすようにためた、お金を日本に送ってくれた。貧者というには申し訳ない。心豊かな人たちの公演が成功することを祈りたい。