池波正太郎さんの『銀座日記(全)』(新潮文庫)をたまに読み返す。昭和50年代末から60年代にかけ、通い慣れた東京・銀座で酒食を楽しんだ様子が書かれている▼だが読み進めるうち、体の変調、衰えが目立ってくる。ラストでは「ベッドに入り、いま、いちばん食べたいものを考える。考えても思い浮かばない」となんともつらい心情を吐露している。結局、平成2年に急性白血病で亡くなった▼後年、池上さんを偲び縁のあった洋食、和食の店主が特集本で対談した。2人が一致するのは晩年、非常に機嫌が悪かったという。病に蝕まれ、どうにもならなかったのだろう。きのう日本女子競泳界の星、池江璃花子選手が白血病を公表した▼18歳の若さであり、東京五輪での活躍も見込まれる中、言葉もない。テレビで見たが本人は疲労蓄積、肺機能の低下などを漏らしていた。幸い発見も早く医療技術にも期待できる。鍛え抜いたアスリートの復活を願うのみ。