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片隅抄

2019.07.27

好間で盛んに石炭が採掘された時代を舞台にした小説の編集を担当している関係で、少しずつ資料を集めている▼紙面では、当時(昭和20~30年代)の様子を読者にわかりやすく紹介するため写真を掲載することにしている。ところが、好間炭鉱や小田炭砿など各坑の風景や炭鉱で働く人たちの写真はあっても、人々の息遣いがわかるような炭住での暮らしぶり(食事風景など)を写したものがなかなか手に入らない▼そんな中、「これはわたしの宝物なんです」と言って、炭鉱で働いた経験のある人が『山例五十三ヶ條祓書申渡之事』という大正15年につくられた巻物を見せてくれた。どういう内容なのか詳しくわからないが、好間炭鉱第一斜坑という組織での〝兄分〟〝掘り子世話人〟〝職親〟といった役職や決め事などが書かれてある▼これもまた生々しい資料といえようが、心配なのは散逸だ。「家族はみんな興味ないみたいで……」。この言葉が不安を膨らませる。

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