40年も前のことで多少記憶が薄れつつあるが、仏具山のふもとにある母の実家では当時、田畑のほかに養蚕業を営んでいた。遊びに行った際は必ず小屋に忍び込み、桑の葉をはむ〝カイコサマ〟を見つめたものだ▼14日にスタートした大河ドラマ「青天を衝け」。主人公の渋沢栄一は養蚕、藍玉づくりを行う深谷の裕福な農家に生まれた。劇中では栄一が愛しそうに桑の葉を蚕に与える様子が描かれ、抄子も幼少時代と重ねて何ともいえない懐かしさを感じた▼渋沢といえば、生涯で481の企業、600にも及ぶ社会事業に関わったとされるが、本市に目を向ければ常磐炭礦の前身となる磐城炭礦を創設、初代会長に就任したことは有名だ▼磐城の豊富で安価な石炭を運ぶため、浅野総一郎、白井遠平とともに常磐線の開通に尽力し、本市経済の礎を築いた。スパリゾートハワイアンズにとっては生みの親ともいえる存在。そんな視点で渋沢の生きざまを見守ってはどうか。
片隅抄