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片隅抄

2021.03.12

東日本大震災発生から、きのうで10年。メディアはここ数日、この災害を記録で振り返っている。特にテレビで大津波のシーンが流れると顔をしかめてしまう。波に呑まれる家々にどれだけの人がいたかと思うだけで、胸が締めつけられる▼あの当時、等しく市民は苦楽を共有した。幸いこちらは、住居損壊などの物理的被害はなかったが、当たり前に送っていた日常生活が寸断されたことに加え、震災発生12日後に突然父親が死に葬儀などの手配が滞った▼個人的に震災ストレスがもたらした影響は少し残っている。幼児だったらトラウマだろうが、あの時期を境にとうに忘れていた遠い昔の出来事がついてまわる。ごくささいなことで破たんした人間関係。過ごした時期の一コマ一コマが浮かんでくる▼もっとも専門的に分析したわけでもないが、混乱した中でそれまで見向きもしなかった安酒が驚くほど美味に感じたくらい、心身共に極まっていたことは確かだった。

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