東電福島第一原発にたまった汚染水。放射性物質の濃度を法令で定めた基準値より低くし、処理水として海洋放出する政府決定がにわかに現実味を帯びてきた▼政府や東電からすれば、原発敷地内で汚染水を貯めるタンクの置き場がなくなりつつある今、一刻も早く放出したいのだろう。日常どこにでもある放射性物質がその濃度によってどれだけ危険か、そうでないかの判断は原発事故直後から混乱した▼だから福島県から県外に避難した人たちが差別されたり、恒例になっていた青森の雪を沖縄の子どもたちに届けるという善意が拒否されたりした▼政府が「これだけの数字に処理したから環境に影響はない」と言っても理解されるはずがない。菅直人さんがカイワレ大根を食べたのとは訳が違うのだ。処理水と汚染水を冷静に区別できるものか。千葉県の三里塚、沖縄県の辺野古。政府・国と地元住民との闘争、対立の歴史はいろいろある。海洋放出はどう着地するか。