ＮＨＫ大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は前半が源頼朝、その後は北条義時が主役となる。だから過去の「源義経」（66年）、「義経」（05年）で主役を張った源義経も今回はわき役。平泉で迎えた最期のシーンはあっさりと描かれた▼源平合戦で欠かせない「屋島の戦い」で源氏方の那須与一が、平家が船上に立てた扇の的を見事に射落とした名シーンもカットされた。平家の挑発に応じた義経が「誰か命中できる者はいないか」と家来にたずねて、文字通り白羽の矢が立ったのが与一だった▼源平両軍が見守る中で、源氏の威信をかけて代表に選ばれたのである。もし仕損じたら……。一度は断ったあたりが人間味を感じる▼的は波で大きく揺れる40間（約72㍍）先の船上。しかも横風が吹いていた。それを海に入った馬上から的中させたのだった。故郷栃木県大田原市の道の駅「那須与一の郷」には、矢を射んとする与一像があって、構内の同じ距離に的が建てられている。
片隅抄
