約半世紀前、中学3年の卒業文集。「20年後の自分」の欄で実物大の地球儀を造っている、もうこの世にいない――などと書いた級友に交じって、抄子は「小説家になって芥川賞を受賞している」と書いた▼小学校から塗炭の苦しみを味わい続けた理数系との決別を誓い、モノを書くというわずかに残された自分の強みを生かそうと思って、夢も大風呂敷を広げたのだった▼作家の夢は高校時代、自信をもって提出した作品を文芸部の顧問に「こんなの小説じゃないよォ」と一笑に付されたのをきっかけに消えたが、結局は新聞記者になれたのだから幸せだったと思っている▼四倉中で行われたプロに学ぶ職業講話で講師を務めた際に、「新聞記者」を選択した生徒たちから礼状が届いた。ただの手紙でなく、新聞の1面形式になっていたのが面白かった。職種は異なろうとも、仕事を選ぶに当たって参考になることを話したつもりだ。ぜひ自分の〝天職〟に出会ってほしい。