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片隅抄

2023.05.30

わが家の食卓から塩紅鮭が消え、半年以上は経つ。前は近くの商店で4切れ498円で売っていたが、値上げが大きく購入を控えるようになった。すると先日、細君が鮭に似た切り身を朝食に並べた▼不思議そうに見て一口ほうばるとほのかな臭み。川魚だ。「ニジマスよ」。裏返し、焼き目の付いた皮を見て合点。聞けば、以前の鮭の切り身よりも安価で店頭に並んでいたから試しに買ってみた▼40年ほど前になるが、夏休みになると毎週のように母方の実家を訪れては、近くを流れる鮫川で遊んだ。遊ぶといっても、年の離れた成人の従兄に誘われては旬のアユを捕まえるため、投網を〝ぶ(打)〟つ。その日のおかずを自ら獲る実用的な遊びだった▼久方ぶりに川魚を食べ、その美味しさに笑みがこぼれ懐古に浸ったが、それも一瞬、急激な物価高に気が重くなる。紅鮭の値上げは、ロシア産だからだろう。世界情勢の不安定さを嘆く朝となり、欝々たる気分になった。

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