「日本国憲法第7条により衆院を解散する」。額賀福志郎衆院議長が解散詔書を読み上げ、衆院が解散された。しかし野党の議員が恒例の万歳を拒否したため、どこか釈然としない光景が広がっていた▼この解散によって、次期衆院選に不出馬を表明した地元選出の吉野正芳氏は、8期にわたる国会議員としての活動に終止符を打った。前任者の更迭で急きょ復興相を務めたが、「復興こそが我が天命である」の矜持を胸に、東日本大震災・東京電力福島第一原発事故からの復興にまい進した▼大臣として復興庁に出向してきた若い官僚と一緒に、昼食でカレーライスを食べながら談義した話は、吉野氏の得意としたエピソード。わが事として、被災地に向き合ってほしいと激励していた▼関係者は「文字通り命を賭して仕事をしていた」と振り返る。少し高めの声で、会えばいつも朗らかに応対してくれた吉野氏。健康上の理由で仕方ないが、花道は少し寂しかった。
片隅抄