休場が続いていた一人横綱・照ノ富士が初場所途中で引退を発表した。土俵入りでさえ分厚いサポーターを巻かなければ所作ができないほど、両膝はボロボロだったのだろう▼横綱不在、それに代わる三役も低調とあって場所ごとに優勝力士が変わり、髷が結えない平幕力士が賜杯を抱くなど、ひところ「番付なき優勝争い」と言われた▼ようやく琴桜、豊昇龍という横綱を目指す強い大関が台頭。大の里、尊富士というスピード出世の若手、翔猿、宇良、王鵬、熱海富士ら個性派も実力をつけてきた。ひとりで孤塁を守ってきた照ノ富士にしてみれば、自分の後継者となる琴桜と豊昇龍の横綱昇進を同じ本場所の土俵で見届けて引退したかっただろう▼ところが、横綱候補一番手の琴桜が失速して勝ち越しも危うい状況に。全勝か14勝が期待される豊昇龍も序盤で土がついた。そんな今場所で大横綱・大鵬の孫の王鵬が6戦全勝と元気だ。新たな横綱候補となれるか期待大だ。
片隅抄