昭和の華々しい芸能界を舞台にあるテレビプロデューサーの生涯を描いた、なかにし礼著『世界は俺が回している』。以前、新聞小説になった際、宇野亜喜良さんのカットが添えられ、登場人物も実名のことから興味深く読んだ覚えがある▼掲載時、存命中の歌手、俳優らの一種スキャンダル的な内容が盛り込まれ、こちらも引きそうになった。売れっ子作詞家として業界の表裏を知り尽くしていた、なかにし氏ならではの一作と思う▼その当該テレビ局、後年大失態を犯した。オウム真理教を批判する弁護士インタビュービデオを教団幹部の要求に従い、事前に見せていたことがのちに発覚した。これが弁護士一家殺害、地下鉄サリン事件などにつながったとされ、大きな非難を受けた▼局内で報道番組を持つ筑紫哲也さんは「×××(局名)は今日死んだ」と発言したことは今も記憶にある。テレビと芸能界の関係もここにきて混迷を極めている。何とも楽しくない。