父が急逝し、借りていた畑をどうするか悩んだ。広さは1反ほどで、柑橘類と渋柿、タラの芽も植えてあった▼仕事の片手間にできるか判断できず「まずはやってみっぺ」と挑んでみたはいいが、そう甘くなかった。草引きに追われる日々。初めて植えた二十日大根は虫に葉を食われ、収穫した実は親指程度。流した汗水の対価に見合わなかったが、大根を眺め心があたたかくなった▼月刊誌「現代農業」を発行する農文協協力の映画、「百姓の百の声」を観た。雑誌に登場する農家13人の技術や知恵、生きざまを追ったドキュメンタリーで、彼らの農家力に驚くとともに、減反、担い手政策、種苗法改正に切り込む内容には、考えさせることも多かった。初心者ながら農業に携わったことで自分事としてとらえられた▼劇中で響いた言葉は「百姓は、自然と人間の接点。自然とも、作物とも、微生物とも付き合うことのできる能力を持った人たち」。特に行政や政治に携わる方々に観てほしい。