大阪・関西万博が先日、開幕した。前回の大阪府吹田市での開催から55年、記憶にある限り当時の盛り上がりは、現在の比ではなかった。そのパーツに三波春夫さんが歌った『世界の国からこんにちは』が今だ耳に残る▼明るく独特の節回しで「1970年のこんにちは~」との歌声は何度も耳にし、「EXPO」という言葉も流行した。敗戦から、わずか25年間に東京五輪、大阪万博と国家プロジェクトを成し遂げた日本の絶頂期でもあった▼だが頂点のあとには、第四次中東戦争を引き金にオイルショックが発生。インフレ、狂乱物価による影響が国内経済に冷水を浴びせた。状況は異なるが、世界各国が戦々恐々とするトランプ関税の発効前夜を思わせる▼アポロ11号が持ち帰った月の石、鋭い先端部に流線形屋根のソ連館、岡本太郎と太陽の塔、松下電器のタイムカプセル…。これらの事象に触れた当時、会場を訪れた気分になった。夢があったということだ。
片隅抄