青々とした苗に水を張った田んぼ。その周囲を軽快に飛ぶツバメの姿。季節が移り秋口には、たわわに実った稲が黄金色に輝く。当たり前に見る瑞穂の国、日本の原風景である▼こちらが新米を味わうまでの期間、一連の作業を取材することがある。田植えでは撮影のため長ぐつを履き、粘りある土の中に足を踏み入れたのだが、前に進むコツが分からず四苦八苦。筋肉痛になるなど、あらためて生産者のご苦労を感じた▼どこでどうねじれたのか、米価が異常に高い。頼みの政府による備蓄米放出も今のところ効果が現れず、現時点で17週連続の値上がりが続いている。不作によるコメ不足なら納得もするが流通経路での滞りが要因とすれば、理解できない▼顧みると、１９９３（平成５）年は記録的な冷夏だった。成育不足から需要分が足りずタイ米輸入などの措置が取られたが、価格暴騰などはなかったと記憶する。今回の不可解な状況はいつまで続くのだろうか。
