スポーツ漫画でさえここまでの活躍を描かないだろうと笑ってしまうくらい信じられない実績を現実に残している野球の大谷翔平選手だが、大相撲にもケタ外れのスーパースターが現れた▼大の里泰輝、24歳。幕下10枚目格付け出しの初土俵から13場所、新入幕から9場所で横綱の地位をつかんだ。負け越しどころか十両以降の11場所で9場所が2ケタ勝ち越しだ。昨年は1月場所で新入幕し、11月場所には大関になっていた▼大学時代の活躍で幕下付け出しでデビューし、大関まで記録的なスピード出世をした力士は数あれど、横綱まで一気に駆け上がったのは輪島だけ。多くは短命で陥落している▼ちばてつや『のたり松太郎』で、主人公が相撲経験なしで幕下付け出しという破天荒な形で角界入りしたのは漫画らしいが、それでも大の里のような最強力士は現れなかった。千秋楽結びの一番の館内の熱狂は貴乃花―武蔵丸以来ではなかったか。名古屋場所が待ち遠しい。
片隅抄