冷やして食す梨のうまさは格別である。甘く豊富な果汁は、しつこさもなく喉を潤す。その昔、ガサガサした食感の「長十郎」が梨の代名詞だった。このイメージを一新したのが、みずみずしさと薄緑色が映えた山陰地方を原産とした「20世紀梨」である▼さて、いわき産梨が旬を迎えている。種類も「幸水」「豊水」など多種であり、自家消費や贈答用にも適する。以前、友人と八丈島から御蔵島を旅した際、封筒入り現金を紛失した。心当たりをあちこち探したが、不明のまま帰郷した▼その後、警察署から八丈島の方が海岸で拾い、届けてくれたと連絡があった。封筒に印刷されていた名前からこちらの所在が分かったのだが、謝礼金は不要とのことで、お礼にいわき産梨を箱ごとお送りした▼紛失した現金は無事に戻ってきたが、その経緯は忘れてしまった。金は「無し」と思っていただけに、島の人の情に感激、「有りの実」で返礼したことが懐かしく思う。