以前、付き合いのあった書家と双葉郡浪江町にある真言宗室生寺派の大聖寺を訪れた。寺には、ひところ有名になった格言集「親父の小言」の書があるとのことで取材も兼ねて赴いた▼先代あるいは先々代の住職の手によるものかは不明だったが、よく知られる男性的な髭文字ではなく、流麗なかな文字だった。当時の調べによるとこの格言はオリジナルではなく、江戸時代の学者石田梅岩が開いた石門心学に由来するとした▼旧入遠野中で「遠野和紙あかり展」が開かれている。初日に訪れ、和紙を通じ淡い光を放つ作品を目にした。その中で「吹く風を勿来の関と思へども道もせに散る山桜かな」と書かれたかな文字を見つけた▼聞けば市美展書の部で市長賞を受賞した女性書家の筆であった。文字の勢いで男女の違いを表すことは性差につながりかねないので控えたいが、その書から時に姿を拝見するご本人を思い出した。限定開催につき、あす4日が最終になる。