最後の一滴が安全に放出し終わるまで、国際原子力機関(IAEA)はこの地にとどまる。東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出を巡り、2023年7月にいわき市で行われた地元評議会で、来日したIAEAのラファエル・グロッシ事務局長は落ち着いた口調で語った▼同年8月に海洋放出が始まり、先月までに通算15回にわたって累計で約11万8千tが海に流されたが、周辺海域に異常は確認されていない▼26日に海の幸のおいしさを伝えるイベントに合わせ、タレント・グルメリポーターの彦摩呂さんが来市した。「いわき市はお魚のテーマパークや~」と会場を盛り上げる姿はさすがだった▼囲み取材で原発事故と水産業の復興についての受け止めを聞くと、「科学的な証明と人の心の両輪で、その良さを広めていってほしい」と答えてくれた。食の魅力を誰よりも知る人に、一つの最適解を教えてもらった気がする。『宝石箱』を繰り出す話術は伊達ではない。