記者人生の多くをいわきの南部地区で過ごし大抵の物事は目に通してきたつもりだったが、中之作に国の登録有形文化財の茶室があることを知り、自惚れていた自身を深く恥じた▼過日、作陶の厳しさややりがいを教えてくださった陶芸家秤屋苑子さんの紹介で、所有されている中山家の「安寿庵」へ。平中平窪から１年もの歳月をかけて移築した、その膨大なエネルギーや郷土史的価値も高い文化財を大切にする思いに深く感銘を受けた。ただ残念なのは移築の背景や当時を知る方々が鬼籍に入られ、詳細を知るまでに至らなかった事▼戦時中から終戦にかけて建てられたという事実ににも驚く一方で、国の登録有形文化財の建造物といえば明治、大正期が相場と、勝手に決めつけていた自身の凝り固まった頭にもあきれ果てた▼と同時に、大正期に開業し、惜しまれつつも解体されたＪＲ小川郷駅の旧駅舎を思い出し悲しくなった。抄子にとって駅舎も同じ価値があった。
