著 者:中島 京子
出版社:集英社
価 格:1870円(税込み)
東京のとある地区で紡ぐ一風変わった人と人の絆
外国人の夫との離婚をきっかけに30年ぶりに日本に帰国した沙希。大学講師をしながら東京、武蔵野のうらはぐさの伯父の家で1人暮らしを始めることに。
生活を始めてからやがて、伯父の友人で自身が構える店の屋上で野菜を育てる「秋葉原さん」、「秋葉原さん」と高齢結婚をした「刺し子姫」、癖のある敬語が特徴的な女子大生「マーシー」と彼女の友達の「パティ」…といった、うらはぐさという地域に縁のある様々な人と出会う。
また、彼らと時間を共に過ごす中で紗希は次第にうらはぐさという地域の魅力に惹かれていく。 うらはぐさの過去を調べ、今は再開発地域に含まれていることを知り、変化していく地域の未来を思い寂しがる紗希。うらはぐさを思う人々の繋がりは強く絆は深いものとなっていき、その未来を自然が見守っている。
町の風土や住人たちの日常が繊細な文体で描かれており、自然との共生がテーマのこの作品は、読者に穏やかな風を感じさせると同時に静かな感動を与えてくれます。
(鹿島ブックセンター勤務)
※紹介する人:小野久光さん