著 者:大森 裕子
出版社:KADOKAWA
価 格:1650円(税込み)
生まれた時からいっしょでもやがて別れの時が…
生まれた時からいつも一緒に育ってきた猫と男の子。窓辺の定位置で一緒に外を眺め、いつしかそこは二人のなわばりになっていました。
楽しい時も悲しい時も一緒に成長してきた男の子が親元から巣立っていく姿を猫目線で描いた絵本です。
文字は少ないですが、やさしいタッチで描かれるイラストは温かみがあり、猫を通して見る男の子の成長にほっこりさせられます。同時に静かに見守る猫の姿はどこか寂しくも、他愛ない日常がこんなにも幸せに満ち溢れているのだと改めて感じさせてくれます。
男の子が巣立っていったことに気づいた猫が彼に向けて言ったラストシーンの言葉には、大人こそ胸にグッとくるものがあるはずです。
小さいお子さんが内容を理解するには少し難しいかもしれませんが、大人になった時にこの作品を思い出してくれたら、と思わせてくれます。送る側と送られる側の心情を柔らかい絵で表現し、当たり前の時間が愛おしくなる切なくも沁みる一冊です。
(ヤマニ書房本店勤務)
※紹介する人:猪狩千晶さん