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いわき昆虫記

ふるさと自然散策・いわき昆虫記104

褐色の小型種で翅は退化

 平下平窪と石森山を結ぶ林道「根廻り石森線」沿いの「下平窪ふれあいの森」へ出掛けた。満開を過ぎて花びらが風に舞い始めていたが、サクラ755本は見事だ。ウグイスやシジュウカラが美しいさえずりを響かせているものの、群れるヒヨドリの歓喜の叫び声が少し騒々しい。
 サクラの花に来る昆虫の撮影が狙いだったが、サクラにも傍らに咲くヤマブキの花にも虫の姿はなかった。足を止めたところで気づいた昆虫は、地面近くでピョンピョン跳ねる地味な色合いの小さなバッタ。サクラの花びら1枚ほどの大きさで、体長およそ1㌢のヒシバッタ科の「コバネヒシバッタ」だった。
 日本に生息するヒシバッタ科昆虫は26種ほどもいて、全身褐色の斑模様には個体変異も多い。それぞれの種ごとの斑紋パターンのバリエーションが豊かであるため、撮影画像からの検索で種名を特定した。和名「コバネヒシバッタ」の「コバネ」は、小さい翅を意味するが、前翅も後翅も退化して痕跡を残すのみで、飛べず、鳴かない。和名の「ヒシバッタ」部分は、ずんぐりとした体を上から見ると菱形のバッタであることに由来している。
 食性は雑食性の傾向のある草食性で、植物の葉などを食べて育つ。昼行性で、夜間は活動しない。成虫の出現期は長く、冬を除いて活動している。
 撮影中、絶えず徘徊性クモ類が接近し、冬眠から目覚めたばかりのアマガエルやカナヘビが落ち葉の上を歩き、アオダイショウも顔を出した。天敵が実に多い。飛べないコバネヒシバッタがこれからの季節を生きのびるには、落ち葉に紛れて静止して、危険が迫った時には、強靭な後肢のジャンプ力で跳ねること。

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