小名浜出身の作家で、「洟をたらした神」で知られる吉野せい(1899~1977)の業績をたたえ、新人の優れた文学作品を顕彰する「第45回吉野せい賞」の表彰式が5日、小川町の市立草野心平記念文学館で開かれた。会場では表彰式を記念して、三島由紀夫賞や大佛次郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞などを受賞してきた小説家で、宮城県・仙台文学館長の佐伯一麦氏による講演会も開催された。
今回は最高賞の吉野せい賞に該当作はなく、無職半沢りつさん(73)=好間町=が準賞に輝いた。奨励賞は団体職員春乃礼奈さん(30)=平、無職伊藤均さん(76)=同、青少年特別賞には中学3年・武藤梨愛さん(15)=錦町、中学2年・米沢咲さん(14)=内郷=に贈られた。併せて、次回募集に向けたポスターの表彰も行われた(受賞者は10月12日付に掲載済み)。
記念講演会では、佐伯氏が「厄災と文学」をテーマに、戦争や自然災害、感染症が文学に与えた影響を解説した。例えば川端康成の異色作「みづうみ」の持つグロテスクさは、根底に広島・長崎の原爆被害があり、「震災後の世の底が抜けた今だからこそ理解できるのでは」と語った。
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