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震災特集<4>被災地照らす「竹あかり」 久之浜の石川さん 復興願い託す
東日本大震災の津波で多くの家屋が流され、その後の火災で焼け野原に。原発事故への不安も大きい。地域の風景が大きく様変わりした久之浜にはしばらく、暗闇を照らす光は灯っていなかった。
月日が経ち、まちは整備され、苦しいながらも前を向こうとした矢先のコロナ禍。再び漆黒に包まれそうになる中、犠牲者を弔い、復興を祈願する〝送り火〟が灯り始めた。「竹あかり」。日蓮宗妙経結社の石川是法さん(66)=久之浜町久之浜=は住民たちの心が少しでも救われることを願い、竹灯ろうを作り続けている。
石川さんは仕事を終えて、四倉から車で帰宅する途中、震災に遭遇した。道路が陥没し、地割れに苦心しながらどうにか家に戻った矢先、久之浜に津波が襲来する。自宅は間一髪被災を免れたが、海側の隣家はすべて損壊。家屋の残骸が流失していく様子を、ただただ見つめるしかなかった。
その後整備された沿岸部には、家が戻りつつあったが、街灯は整備されておらず、夜は真っ暗闇に包まれる。まち明かりを取り戻すことで、少しでも住民の心に、〝癒しの灯〟をつけることはできないだろうかと思った。
偶然、熊本県で行われていた竹あかりのイベントを目にした。「これなら自分でもできるかもしれない」。コロナ禍の影響で時間に余裕があったこともあり、地元の竹を秋から冬にかけて伐採し、見よう見まねで竹灯ろうの自作を始めた。
水や油分を抜いて天日干しした後、主に桜などの花をデザインした紙を巻き付けた上から、ドリルで穴をあける。石川さんは竹あかりに復興への願いと犠牲者を弔う〝送り火〟の意味を込め、ひとつ、ふたつと数を増やしていった。
あかりイベントを久之浜で開催したい、との思いは結実する。久之浜・大久地区復興対策協議会、市久之浜・大久支所の賛同を得て、地区有志で実行委員会を設立。〝満〟を持して、昨年10月に「満月祭」を催した。久之浜の防災緑地に、約350の竹あかりを並べると、住民をはじめ千人ほどでにぎわった。
「将来的には、『久之浜といえば竹あかりだよね』といったイベントに成長してもらえれば。これからも(地元の方々と)協力し合いながら、作り続けていきたい」と石川さん。目標は、竹あかりで久之浜全域を照らすこと。震災を後世に伝え、心を照らす存在となることを心から願っている。