学校生活の多くをマスク姿で過ごしたが、すべての出来事は今の自分をつくるためにあった。つらいこともあったけれど、その分周りの人たちの苦しみ・悲しみを察し、心に寄り添うことができる――。
平出身で、国立音楽大音楽学部音楽文化教育学科1年の高崎優美さん(19)は、これまでの感謝と、明日への活力・希望を伝える自身初企画の演奏会を20日、いわき芸術文化交流館「アリオス」で催す。
「被災していろいろな思いを抱えている人たちに、気軽にふらっと立ち寄ってもらいたい。一緒に前に進んでいきましょう」と来場を呼び掛けている。
高崎さんは、東日本大震災が起きた12年前は7歳になったばかりの郷ケ丘小学校1年生だった。ヨウ素・セシウム・メルトダウン……。知らないカタカナ用語が日常にあふれ、親からは「外に出るな」と注意された。
震災や原発事故に翻ろうされ、転校を繰り返す友人をたくさん見送った。「いつかまた会おう」と約束したまま月日だけが流れた。「けれど、うれしいことや楽しいことも含めてすべては今につながっている」。人生におけるプラスと捉えている。
高崎さんが2歳の時に亡くなった父親は、いわき交響楽団のクラリネット奏者だった。その姿に憧れ、中央台北中学校の吹奏楽部に入部し、本格的に音楽活動を始めた。いわき光洋高入学後はコロナ禍の影響で再びマスク姿になり、音楽活動を制限される事態に。
「一体何のために音楽をやってきたのだろう」と自分を見失いかけた時期もあった。しかし「ありのままの自分を表現し、何物にも邪魔されない音楽という自由な空間が好き」と、救いにもなった。
演奏会では、父譲りの形見のクラリネットで演奏する。「一瞬一瞬がとても濃く、すべてをまるっと抱きしめたい」経験を共有した中高時代の仲間たちにも声を掛け、共演する。
約2時間のステージで最も伝えたいことは、「過去のおかげで今がある」という当たり前の事実。高崎さんは「大変なこともあったけれど、未来を生き抜く勇気を、音楽をきっかけに思い起こしてくれたらうれしい」と話している。
当日は開場が午後1時45分、開演が同2時。事前の来場者登録が必要。問い合わせは、高崎さん=メールtakasaki.yumi.kcm@gmail.com=まで。
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