東京電力は24日、福島第一原発の汚染水を浄化した後の処理水を巡り、午後1時すぎから海洋放出を始めたと発表した。海洋放出に向けては、放出直前での測定結果に問題がないことが分かり、気象・海象条件も整っていたため、政府が決定した24日に予定通り始めた。放出期間は30年程度に及ぶ見通しで、福島第一原発の廃炉に向けた新たな一歩となる。
福島第一原発では、2011(平成23)年3月に、炉心溶融(メルトダウン)が生じ、溶け落ちた核燃料を冷却した後の汚染水が発生しており、これを多核種除去設備(ALPS=アルプス)で浄化処理してる。
処理水のタンクは1000基以上あり、来年2月以降には満杯になる可能性がある。廃炉作業の妨げになるとして、2021(令和3)年4月、当時の菅内閣で海洋放出が決定した。
海洋放出は、処理水に残る放射性物質トリチウムの濃度が、国の基準の40分の1(1リットル当たり1500ベクレル)未満、世界保健機関(WHO)の飲料水基準の7分の1未満に希釈し、福島第一原発の港湾外から取り込んだ海水で希釈した上で、海底トンネルを経由して、沖合1kmから流していく。
トリチウムは三重水素とも呼ばれ、普通の水と性質が似ており、現在の技術では除去は難しい。そのため海外でも基準値以下に薄めて、恒常的に海洋放出を行っている。
東電では22日から海洋放出の準備を進め、海底トンネル直前の放水立坑と呼ばれる大型水槽で、最初に放出する予定の処理水のうち、約1トンを海水約1200トンと混ぜ合わせ、問題がないかを調べていた。その結果、トリチウム濃度は同63ベクレル(最大値)まで下がり、日本原子力研究開発機構が第三者機関として、独自に分析した結果も同程度の数値だったという。
最初は10基のタンクに入っている処理水約7800トンについて、約17日間かけて海に流す。本年度は処理水を貯蔵するタンク約30基分にあたる計約3万1200トンを、4回に分けて海に流す計画となっている。
政府と東電は、原発周辺海域のモニタリングを実施し、ホームページなどで、25日から公表していく。
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