イアン・マッケイ駐日カナダ大使は9日、東日本大震災・東京電力福島第一原発事故の被災地視察の一環で、いわき市を訪問した。福島第一原発の処理水を巡り、昨年8月から始まった海洋放出について、国際社会で誤情報が拡散している現状を踏まえ、正しい内容を発信するための来市で、震災・原発事故から13年が経過する中でも、引き続き被災地に寄り添う姿勢も示した。
カナダ大使館のクリスティーヌ・ギルボー一等書記官、長谷川千花政治・経済部補佐が同行した。
マッケイ氏は9日午前、小名浜魚市場や市観光物産センター「いわき・ら・ら・ミュウ」に足を運び、市漁協(市漁業協同組合)や同センターの担当者から、水産物の放射性物質検査の状況について説明を受けた。
いわき市の漁業を取り巻く環境に関する質問も交えながら、本格操業への課題や、地元水産物の魅力などに触れたマッケイ氏。「カナダ政府は原発処理水の海洋放出について、100%支持している。福島の魚は、どこよりも厳しい検査を受けていることも理解している」と力強く語り、次は競りの時に来たいと笑顔を見せた。
同センターでは、「ライブいわきミュウじあむ」でいわき民報社撮影の写真パネルを含め、震災直後の様子や、復興を遂げてきた姿も見学したほか、昼食として「常磐もの」に舌鼓を打った。
一行はこれに先立ち、平上平窪の障害児者支援センター「エリコ」を訪れた。いわき福音協会が運営するエリコは、カナダ産木材を使用し、被災地に施設の建設支援を進める「カナダ―東北復興プロジェクト」を通じて、2015(平成27)年1月に完成。藁谷健一理事長から、震災・原発事故で被災した障がい者とその家族に向け、交流や安らぎの空間となっていることが披露された。
8日には福島第一原発に赴き、海洋放出の状況を直に確認。双葉郡双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館では、土屋品子復興相と懇談した。
(写真1枚目:放射性物質検査について理解を深めるマッケイ氏ら 2枚目:カナダ産木材を使ったエリコの訪問)