田人町旅人を震源に、東日本大震災の1カ月に発生した最大級の余震「福島県浜通り地震」から丸13年に合わせ、田人小・中で11日、子どもたちに向けた初めての講話が開かれた。震災の記憶が無かったり、発生後に生まれたりした世代のための企画として、地元住民らで構成する田人地域振興協議会が主催し、小学3年~中学3年の児童・生徒45人が、当時の様子や災害に対する備えについて学んだ。
2011(平成23)年4月11日に起きた浜通り地震では、田人地区で大規模な土砂崩れが起き、4人が亡くなった。マグニチュード(M)7・0、最大震度6弱に見舞われたほか、田人地区の北側から南東側にほぼ横断する約14kmに、約1万5千年ぶりに活動した「井戸沢(いとざわ)断層」が出現した。
同協議会では2013年から毎年、井戸沢断層に沿って、地元のイメージカラーの黄色にちなんで、イチョウを植樹することで、災禍の伝承に努めてきたが、今年からは新たに語り部による企画を始めた。
講師のうち、斉藤富士代さん(80)=田人町黒田字塩ノ平=と、大竹保男さん(75)=同町石住字才鉢=は、写真や映像を交えながら、それぞれ13年前に体験したできごとを丁寧にひも解きつつ、「災害はいつ起きるか分からない。日ごろから備えを大切にしてほしい」と呼び掛けた。
斉藤さんはいわき語り部の会に所属し、薄磯のいわき震災伝承みらい館で、県内外からの来館者に話をする機会を設けている。同会で浜通り地震を伝える人は、斉藤さんのみという。
直下型地震による突き上げの揺れは、いまだに記憶に新しいといい、自宅近くには断層崖が出現し、生活にも大きな影響を与えた。しかし井戸沢断層の学術的な貴重さを踏まえ、見学する人を積極的に案内。国内のみならず、フランスの研究者も足を運んだ。
講話は得意としているが、小・中学生に限るのは初。「普段は田人の自然の美しさも含めて話すが、きょうは当時の記憶のない地元の子どもたちのため、少しでも理解を深めてほしいと思った」と振り返った。
また市立美術館副館長の下山田誠さん(54)も、市田人支所の地域振興担当員や支所長を務めた経験から、同協議会の一員として登壇した。
児童・生徒はいずれも真剣な表情で耳を傾けており、震災翌年に生まれた小学6年の荒川晃匡君(11)は「東日本大震災については見聞きしていたが、浜通り地震も思った以上の地震だった。初めて知ることばかりだった」と語る。
自宅は四方を山に囲まれているため、「土砂崩れの怖さも分かった。災害に向けて、もっと家族と話してみたい」とも述べ、講話が一つのきっかけとなった様子だった。
(写真:田人小・中で行われた初めての講話)
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